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CIO補佐官×ICT職でDX機運を醸成。新時代に合わせたサービスの根幹を作る
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DXにより、行政サービスの品質向上をめざす東京都。デジタル化を加速させるため、2023年4月から都庁各局にCIO補佐官を配置しました。そこで、子供政策連携室でCIO補佐官を務める土村と、ICT職として現場をサポートする小泉、相澤が、部署のデジタル化を底上げするための取組について語ります。
土村(東京都/事務職)
子供政策連携室総合推進部長。1993年東京都庁入庁。教育庁をスタートに、自治制度、福祉行政、産業政策、デジタル関係の業務に携わり、2022年より現職。2023年4月からはCIO補佐官を兼務。子供政策連携室のDX推進役として、さまざまな取組を企画している。
小泉(東京都/ICT職)
子供政策連携室総合推進部総務課企画担当課長代理(デジタルサービス局よりICTの支援担当として子供政策連携室に兼務で配属。ICT職)。銀行のシステム開発・運用保守を行う企業に18年勤めた後、キャリア活用で2019年東京都庁入庁。総務局人事部所管システムの開発・運用保守担当を経て、2023年より現職。
相澤(東京都/ICT職)
子供政策連携室総合推進部総務課企画担当(デジタルサービス局よりICTの支援担当として子供政策連携室に兼務で配属)。2023年4月新卒で東京都庁入庁。デジタルサービス局と子供政策連携室を兼務し、ICT職として室内のデジタル・ICT関連に関する問い合わせ等の全般的なサポートを行っている。
草の根的なアプローチで各局のDXを推進するのがCIO補佐官の役割
東京都では、2023年4月から各局にCIO補佐官を配置しています。まずは、CIO補佐官の役割について教えてください。
土村:CIO補佐官は、各局長の下でICT職(都政とICTをつなぎ、課題解決を図る人材)などのデジタル人材と協働して、職場の業務改革や意識改革を行う「局DXの推進役」です
都庁全体のDXは、デジタルサービス局が核となり各局を支援する形で進めていますが、支援を受ける側の自立性も必要です。そこで、草の根的なアプローチで各局のDXを進める役割を担うのがCIO補佐官なのです。
各局はもちろん、職員それぞれでもDXに対する意識は異なると思いますが、その底上げをするような役割ということでしょうか?
土村:私自身もともとデジタルには疎いんです。だからこそ、私が一番意識しているのは、デジタルに苦手意識のある人のバリアを下げて、前向きにマインドチェンジをしてもらうことです。
DXのXは「変化・変容」。苦手意識のある層も参加してもらわなければ、変えていくことができません。そのために、デジタルへの抵抗感を減らし、“自分ごと”として捉えてもらえるように働きかけることが大切だと考えています。
職員へ働きかける際に、どんなことを心がけていますか?
土村:皆が関心を持ってくれそうな企画を立てたり、専門用語を誰もがわかるような言葉に翻訳したりといったことを心がけています。あとは、日常業務の中でデジタルの便利さを実感してもらう機会づくりが大事ですよね。
そういった点でも、デジタルに対して“素人”の私がCIO補佐官をやる意味があると思っています。私自身が理解できないことは、職員も理解できないということですから。私のような素人でも腹落ちするような説明、興味を持てそうな企画、メリットを感じられる取組というのが、一つの指標になると思うんです。
自局の取組だけではなく、それを横展開していくような役割も担うのでしょうか?
土村:そうですね。東京都のCIOである宮坂 学副知事も、「良い発想はどんどん真似しよう」と発信していますし、定期的にCIO補佐官同士のミーティングがあるので、そこで取組を共有しています。
「デジタルっておもしろい」。“お茶会”での情報交換がDXを広げる糸口に
子供政策連携室では、「デジタル茶会」を開催していると聞きました。どのような企画なのでしょうか?
土村:デジタルに関心を持ってもらうという目的で、月に1回ほど自由参加で勤務時間外に開催している会です。最近話題の生成AIや海外の最先端技術の話、都庁のデジタル10か条についてなど、お茶やお菓子をつまみながら、カジュアルに情報交換しています。
これも参加のハードルを下げることが大事だと思っているので、とにかく楽しんでやることを心がけています。デジタルについて学んでほしいということではなく、あえてリアルで行う雑談の中で何か1つでも2つでも気づきがあればいいなと思っているんです。まだ始めたばかりなのですが、他のチームから参加してくれる人もいますよ。
小泉さんと相澤さんは、ICT職としてデジタル茶会の運営に携わっていますが、企画を聞いたときはどのような印象を持ちましたか?
小泉:第一印象は「おもしろい!」でした。
私たちは、子供政策連携室へはデジタルサービス局との兼務として配置されています。子供政策連携室では、日々、室におけるDX推進や、情報システムの開発推進・監理などを行っているのですが、ベースは技術職ということもあり、子供政策連携室の皆さんにとっては少し距離が遠く感じる部分があると思うんです。
こういった取組があると距離が近づくのはもちろん、「デジタルっておもしろいね」と感じてもらい、室としてDXを進めていく機運を高めるきっかけになると感じました。
相澤:私も、こういう取組はICTをサポートする上で欠かせないと思います。私自身、2023年に入庁したばかりでまだまだ知識が足りないので、自分が勉強する場としても良い経験をさせてもらっています。
お茶会をきっかけに、何か変化を感じたことなどはありますか?
小泉:参加した人の感想を聞いて、「おもしろそうなことやっているね。次回はぜひ参加したい!」と声をかけてくれる人がいたんです。まずは興味を持ってもらうことが大事なので、DXを広げていく糸口になっているな……と感じました。
東京都はDXに本気で取り組んでいるので、各種ツールやサポートはかなり充実しているのですが、日々の忙しい業務の中で深く浸透するのが、なかなか難しいんです。
相澤:たとえば生成AIを取り上げた会の後、「どういう使い方ができるのか知りたい」と相談をもらいました。紹介した内容が伝わって、興味を持ってもらえたことを実感できて嬉しかったですね。実演してみて、どんなものかを体験してもらったこともポイントだったと思います。
土村:「自分たちでも使えるんだ」と理解してもらうには、実際に触れてみることが大事ですよね。「これで便利になるかも」と感じるきっかけになればいいなと思っています。
掲示板を使ってデジタルでできる解決策を共有。前向きなマインドへ変化
子供政策連携室ではほかにも、「それDXにやらせてください」「ココダッタラ」という企画を実施しています。これらは、どのような取組なのか教えてください。
土村:先ほどお話したように、“自分ごと”として捉えるためには、デジタルの具体的なメリットを感じることがポイントです。
そのためのインフラとして、普段の困り事を職員に投稿してもらい、その解決方法をICT職の小泉さんたちが回答するプラットフォームとして立ち上げたのが、「それDXにやらせてください」です。
「ココダッタラ」は、「それDXにやらせてください」と連動していて、ICT職以外にも、それぞれの職員が持っているノウハウやスキルを困り事とマッチングするコミュニティです。投稿された困り事に対して、「自分はこういう方法を知っていますよ」と提示できるんです。
全庁を対象にした掲示板もあるのですが、そこにちょっとした困り事を投稿するのって、ハードルが高いんですよね。身近な仲間が答えてくれるなら、「デジタルで解決できるかわからないけど、何か方法ないかな?」というレベルの相談もできます。
実際に、どのような困り事が投稿されていますか?
相澤:公用スマートフォンの電話帳の取り込み方法や、Wi-Fi接続に関すること、音声の自動書き起こしツールなどについての相談がありました。
中でも、PDFの編集や複数ファイルから検索する方法の相談を私が担当したのですが、いろいろと調査して回答したことに対して感謝してもらえたことが、ICT職としてとても嬉しかったですね。
小泉:ICT職に相談すれば前向きに進むと理解してもらえるようになってきたと思います。小さなことでも、デジタルの恩恵を実感してもらうことが機運醸成につながっていると感じますし、皆さんの業務推進に寄与できることが大きなメリットです。
取組の効果が早速出ているんですね。ほかにも、何か変化を感じることはありますか?
土村:職員から、「デジタル化で業務改善できることがないか考えるようになった」という声があったのは嬉しかったですね。やっぱり、実例を目の当たりするとマインドチェンジにつながるんですよね。
小泉:最近もらった意見では、緊急時の連絡ツールに関しての提案もありました。困っていることを相談するだけではなく、さらに踏み込んで提案してくれるケースも出てきたので、それにしっかり応えていきたいですね。
また、実際の業務課題に対するソリューション提供のきっかけになるので、相澤さんのような若手ICT職の育成にもつながると感じています。
時代にマッチした政策集団であり続けるために、デジタル人材が機能できる環境を作る
東京都のDXを加速させるためには、デジタル人材の役割がさらに重要になっていきます。ICT職に期待することを教えてください。
土村:行政というのは、ハード・ソフト両面の社会インフラを作り、住民のQOL(Quality of Life/生活の質)を上げていく仕事です。これからの時代に、社会インフラにはデジタルも組み込んでいかなければいけません。ICT職は、新しい課題に適応したサービスの根幹を作り上げるエンジン役なのです。
それは、社会に対してインパクトのある規模を持つ東京都だからできることでもあります。さまざまな分野でデジタルを社会実装していけることが東京都の強みだと思うので、その担い手として小泉さん、相澤さんをはじめとしたICT職に大いに期待しています。
その言葉を受けて、小泉さん、相澤さんがこれから取り組んでいきたいことを教えてください。
小泉:私たちはDXの機運醸成の取組のみならず、子供政策連携室の各事業のシステム開発に深く関わり支援しているのですが、事業を所管する側に、技術的なことを理解し、都政を理解して、一番近くで共に考える「人材」が求められていると感じます。
まずは、その人材として、引き続き現場で貢献していきたいですね。私は「子どもに関わる事業に自身のシステム関連のスキルを活かして貢献したい」という思いがあり行政に入ったので、今、願いがかなって幸せですし!
そのためにも、技術力の向上や新しい技術のキャッチアップを心がけたいと思っています。ICT職には、技術職として多様な研修が用意されていますので、積極的に受講していこうと考えています。また、都政とICTをつなぐことが私たちの役割ですから、都政にもアンテナを高くして、日々研鑽していきたいですね。
将来的にはそのスキームをもっと広げて行けたらなと考えています。私のように民間での経験を持った人材が、現場で事業に寄り添ったり、デジタルサービス局やGovTech東京で専門的な業務をしたりと、さまざまな形で事業に貢献するキャリアを描けるといいですね。
相澤:私は、まずは今できることに全力で取り組むことを目標にしています。その先に、各部署のDX推進はもちろん、都庁でしかできないようなデジタル分野にも関わっていける未来が見えてくるのではないかと考えています。
現在所属している子供政策連携室は、学ぶ環境としても恵まれていて、とてもありがたい職場です。これからさらにいろいろなことを学び、皆さんのお役に立ちたいと思っています。
土村:そのためにも、デジタルの専門職と事務職の間にある垣根はどんどんなくしていくべきです。都庁では近年、新卒、既卒、経験者とさまざまなフェーズでICT職を採用できる仕組みを作りましたし、長く活躍してもらえるようにキャリア面も整備しています。
都庁が時代にマッチした政策集団であり続けられるように、ICT職がデジタルの専門家としてきちんと機能できる環境を作っていきたいですね。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです