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スキルは活かせる?働き方は?キャリアは? ICT職への疑問に「一問一答」で答えます
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「都庁のICT職って、実際どんな働き方をしてるの?」「民間企業との違いは?」
専門性を活かして都政のDXを推進するICT職。しかし、その具体的な仕事内容や職場環境については、意外と知られていないかもしれません。
そこで今回は、IT企業や一般企業の情報システム部門で勤務されている方々を対象にアンケートを実施。転職活動中に感じやすい「リアルな疑問」について、現場で活躍するICT職の2名が、一問一答形式でお答えします。
那須野(東京都/ICT職)
デジタルサービス局 DX協働事業部 DX協働事業課 各局DX協働 担当(産業労働局総務部企画調整課デジタルシフト推進担当兼務)
独立系SIerで損害保険システムの開発保守を経験。その後、インフラ企業で電力関連業務の改善やシステム対応に従事し、2023年に東京都庁に入庁。各局及び政策連携団体等のデジタルサービスの品質確保・向上に係るサポート業務を担当し、現在は産業労働局兼務として生成AIの利活用やBPRの推進に取組む。ICT職3期生。
山本(東京都/ICT職)
デジタルサービス局 総務部 デジタル人材戦略課(デジタル人材確保・育成担当)
広告制作会社でイベント運営や事務局業務に従事し、行政機関の申請受付システム構築を経験。その後、東京2020組織委員会に常駐。2022年に東京都庁へ入庁し、東京版新型コロナ見守りサービスや生成AIの導入・運用を担当。現在はデジタル人材の確保・育成を担う。ICT職2期生。
働き方・ライフプラン編
ICT職は、それぞれのライフステージに合わせた働き方をどのように実現しているのでしょうか。気になる職場環境やライフプランについて聞いてみましょう。
Q1. 忙しくて休みが取りづらい……なんてことはありませんか?

那須野:民間企業にいた頃と大きくは変わらない印象です。有給休暇は、自分でスケジュールを調整すれば、気兼ねなく取得できています。都庁の業務は年度単位で動くため、予算要求の時期や年度末が繁忙期になるなど、スケジュールの見通しを立てやすいのが特徴かもしれません。
山本:忙しさは時期や部署によって差はあるものの、週末はしっかり休めています。繁閑の波を読めるので、オンとオフのメリハリはつけやすいですね。休暇は調整しやすく、休みづらさを感じたことはありません。
Q2. リモートワークやフレックスなど、柔軟な働き方は可能ですか?

那須野:都庁ではリモートワークが浸透しています。私も週に2日ほど活用していますが、通勤時間が短くなることで、子どもの送り迎えなど家庭の時間にも余裕ができ、とても助かっています。勤務時間も柔軟に選べるのが魅力です。職員の勤務条件として複数の勤務パターンが用意されており、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選ぶことができます。
山本:私も週に1〜2回ほどリモートワークを取り入れています。勤務時間は、始業・終業ともにやや早めのパターンを選択。基本の勤務パターンをベースにしつつ、必要に応じて調整できるので、自分に合った働き方ができていると感じます。
▸1日のスケジュールや働き方は以下の記事でも紹介しています。
1日のスケジュールから知る、東京都ICT職の仕事、働き方、環境のこと
Q3. 家庭との両立について、どのような理解やサポートがありますか?
那須野:私も子育て中ですが、仕事と家庭を両立しやすい環境を実感しています。子どもの急な発熱時には看護休暇とリモートワークを組み合わせたり、やむを得ない事情がある場合には小学3年生までの子どもを職場へ同伴できたりと、状況に応じた対応が可能です。近年では男性職員の育休取得も増えており、今後さらに広がっていくと感じています。
山本:子育て経験のある管理職も多く、日頃から理解や配慮を感じています。都庁には、管理職から働き方への意識を変えていこうという「イクボス宣言」の取組があり、ライフイベントをチームで支え合う雰囲気が根付いていると思います。
▸「子連れ出勤」広がる、自治体が人材確保狙い導入…民間も「企業主導型保育所」で預かるケース増加 : 読売新聞
▸2023年度における育児休業の取得率は、男性職員が86.6%、女性職員が102.3%でした。
仕事・キャリア編
ICT職の実際の業務は?どんなやりがいがある?働く人の視点から、その魅力と可能性を探ります。
Q4. 意思決定のスピード感や組織の連携はスムーズですか?

山本:入庁したての頃は、行政特有の手続の煩雑さに戸惑ったこともあります。しかし今は、都民の税金を扱う立場として、説明責任を果たすために必要なプロセスだと受け止めるようになりました。また、すべての決定に時間を要するわけではありません。新型コロナウイルスへの対応や生成AIの導入プロジェクトのように、スピード感を持って進めることもあり、ケースバイケースだと感じています。
那須野:行政には縦割りのイメージを持たれがちですが、職場の風通しは比較的良いです。デジタルサービス局には、事務職とICT職といった異なる職種が同じチームで働いており、GovTech東京と連携する場面も多くあります。立場や職種に関わらず、お互いに敬意を払って円滑にやり取りできていると感じています。
Q5. ICT職の具体的な業務内容がイメージできません……。

那須野:最初に配属した部署では都庁各局のシステム化案件のサポートに携わりました。具体的には、システム発注に向けた予算要求のフォロー、仕様書のレビュー、契約後の事業者との調整、スケジュール管理や品質管理など、プロジェクトマネジメント業務全般ですね。いまの部署では業務により近い立場で局内のDX推進に取り組んでいます。
山本:基盤部で新型コロナウイルス感染症対策や業務改善ツール、生成AIの導入に携わり、現在は総務部で人材育成を担当するなど、ICT職の幅広いキャリアパスを実感しています。
担当する分野は幅広いですが、ICT職の根本的なミッションは、東京都のDXを推進すること。事業部門と委託事業者の間に立ち、技術的な知識を活かして両者の橋渡しをする、「通訳」としての役割が求められています。
Q6. 自分のスキルや経験が本当に役立つのか不安です。
那須野:デジタル分野と一括りに言っても、インフラ、ネットワーク、ソフトウェア、セキュリティなど領域は幅広く、経験が活かせる場面がきっとあるはずです。キャリアメンターとして先輩職員が支えてくれる制度もあるので、不安を感じずに一歩を踏み出せると思います。
山本:私は文系出身だったので、研修やOJTを通じて少しずつ知識を身に着けました。もちろんデジタルスキルは大切ですが、それ以上に「都民のために働きたい」という思いが何より重要だと感じています。自分の経験を都庁というフィールドでどう活かせるかを考える。そうすれば、活躍の場は無限に広がると思います。
Q7. 入庁後のキャリアパスや研修について教えてください。
山本:ICT職として入庁すると、システム開発や運用に加えて、施策の立案や庁内外との調整など企画業務にも関わります。デジタルの専門性を活かしながらジョブローテーションを通じて多角的な視野と実務力を広げられるのも特徴です。
キャリアパスは、行政とデジタルの知見を有するゼネラリストとして組織をけん引する管理職の道と、特定分野の専門性を活かす道の二通りに大別され、志向や適性に応じて進路を選ぶことができ、自ら手を挙げて昇進試験に挑む職員も少なくありません。
那須野:研修は非常に豊富で、民間以上だと感じるほどです。全体向けの集合研修や、ICT職向けの専門研修に加えて、自分の興味のあるスキル分野を選んで学ぶ機会もあります。行政ならではの文書事務や東京都職員としての基礎を学べる場もあり、未経験の分野にも挑戦できるのが魅力です。
▸東京都デジタル人材確保・育成基本方針にてキャリアラダーが定められています。
待遇・働く環境編
福利厚生の充実度や働く人の雰囲気から、ICT職の「中の顔」を見ていきましょう。
Q8. 職場の雰囲気や、職員の方の人柄を教えてください。
那須野:中途入庁された方の前職は情報通信、自治体、教育など様々ですが、互いの経験や考えを尊重し、協力しながら仕事を進める風土があります。高い専門性を持つ職員も多く、日々刺激を受けています。
山本:私たちはICT職であると同時に「行政職員」でもあります。都庁のDXを通じて職員の働き方を変え、その先にある都民サービスの質の向上につなげていく。そうした価値観のもと、日々の業務に向き合う職員が多い職場だと感じます。
Q9. 給与や福利厚生の充実度について、率直なところを教えてください。
山本:民間時代と比べて、大きな差は感じていません。キャリア活用採用の場合は、一定の基準のもと入庁前の経験が初任給に反映されますし、地域手当や扶養手当、住居手当なども条件に応じて支給されるため、生活面でのサポートも手厚いと感じます。何より、収入が業績に左右されず安定して働ける点は、落ち着いて仕事に向き合える安心感につながっています。
那須野:福利厚生も充実している印象です。業務との調整次第ですが、夏季休暇を5日間連続で取得することもできます。遠方への帰省など、家庭の事情に応じた柔軟な取得も可能と思います。また、小学校就学前の子どもを育てている場合には、部分休業や育児短時間勤務などの制度も活用できるので、長く働ける環境が整っていると感じます。
▸給与等の待遇に関する詳細は、東京都デジタル人材採用情報サイト(WORKSTYLE)からご確認いただけます。
未来の仲間へのメッセージ

那須野:新しい環境に飛び込むのは不安もあるかもしれませんが、都庁には、皆さんがデジタル分野で培ってきた経験を活かせるフィールドがきっとあります。都政の動きや行政の知識などを学びながら、私たちと一緒に都庁のDXを進めていきましょう。
山本:契約や予算に関する手続など、民間と異なる点が多く、行政特有の進め方に戸惑う場面もあるかもしれません。ただ、それは都民への責任を果たすために必要な過程です。現在、東京都庁はDX・AIの活用が加速する変革期にあります。複雑な業務も、技術と皆さんの力で改善できる可能性があります。ぜひ力を貸してください。