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自分らしさを軸に、可能性が広がっていく。民間出身の女性ICT職が語る、都庁での仕事に対する思い
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デジタル技術の進展に伴い、オンライン申請や電子決済、手続のワンストップ化など、新たな仕組みが社会全体に普及しています。東京都でも、ICTを活用したサービス開発や業務改革が加速。ICT職はその中核として、活躍の幅を広げています。
今回は、異なるバックグラウンドからICT職に挑んだ中村と田添にインタビュー。それぞれの業務内容ややりがい、ライフ・ワーク・バランスについて聞きました。
(記事中の組織名称は配属当時のものです)
中村(東京都/ICT職)
保健医療局 企画部 企画政策課 デジタルシフト担当 課長代理(デジタルサービス局より各局DX支援担当として保健医療局に兼務で配属 )
民間企業でシステム開発・保守を経験後、2019年東京都庁に事務職として入庁。21年にICT職へ職種転換。ICT職1期生。
田添(東京都/ICT職)
デジタルサービス局デジタル基盤部デジタル基盤運用課(プラットフォーム運用担当)
民間企業のインフラエンジニアとしてネットワークの設計構築などに従事した後、2024年東京都庁入庁。ICT職4期生。
民間から行政へ。公務員未経験で都庁へ飛び込んだ理由

はじめに、お二人の現在の仕事内容とこれまでのご経歴について、教えてください。
田添:各局が保有するデータを有効活用するための、ダッシュボードの提供を担当しています。前職では民間企業のインフラエンジニアとして常駐先に赴いて、ネットワークの設計・構築などの業務に携わっていました。
中村:デジタルサービス局に所属しながら、DX支援の一環として保健医療局のデジタルシフト推進担当を兼務しています。現在は、医療・福祉分野の申請システム統合に向けたデジタルプラットフォームの開発が主な業務です。
前職の民間企業では、営業や広告制作を経験。その後、ジョブローテーションを通じてシステム保守や開発に携わりました。都庁に入庁した当初は事務職でしたが、ICT職が新設されたことを機にキャリアチェンジしました。
なぜ、東京都に転職しようと思ったのでしょうか?
田添:前職でお客様先に常駐し、様々なプロジェクトに携わったことは、視野を広げる良いきっかけになりました。ただ、常駐先が変わるたびに業務内容や人間関係を一から仕切り直すことに、不安も感じていたんです。
そのため、今後は安定した環境でキャリアを着実に伸ばしたいと考え、転職を検討し始めました。そんな中、友人から都庁にデジタル専門職としてICT職が新設されたことを聞いて……。「都庁であれば、これまでのスキルを活かしながら腰を据えて働ける」と思い、志望しました。
中村:2020年の夏季オリンピックが東京で開催されることを機に、「今しかできないことを楽しみたい」と思い、都庁に興味を持ちました。入庁後はオリンピック・パラリンピック準備局に配属され、ICT職が新設されるまでの3年間、事務職として従事しました。
ただ、当時を振り返ると、民間出身の自分が公務員としてきちんと務まるのか、不安もあったように思います。
未経験の分野である“公務員”という働き方への不安は、どのように解消されたのでしょうか?

中村:公務員には、民間とは異なる仕組みやルールがあり、専門的な行政用語が飛び交う職場をイメージしていました。でも、組織ごとに異なるルールや文化があることは民間企業に転職する時も同じですよね。入ってみないと分からないことも多いし、専門用語はどの業界にもある。だからこそ、まずは与えられた役割を全うし、目の前の仕事を楽しもうと気持ちを切り替えました。
田添:私は情報を集め、働く環境を知ることで少しずつ不安を払拭しました。東京都デジタル人材採用情報サイトやICT職特設サイトには、具体的な仕事内容や職員のインタビュー記事が掲載されていて、オープンな雰囲気や柔軟な働き方が伝わってきました。「思っているよりも民間企業に近いかもしれない」と感じたことが、転職を決意する大きな後押しになりました。
ベストを追求できるこの環境で、「より良いもの」を作りたい
中村さんが担当されている、“福祉・保健医療分野のデジタルプラットフォーム構築”について、具体的に教えてください。
中村:今後、人口減少が見込まれる中、限られた人材で多様化する都民のニーズに応えるため、2024年3月から福祉・保健医療分野のDX推進の更なる加速化に取り組んでいます。
その重点事業の一つが「福祉・保健医療分野のデジタルプラットフォーム構築」です。

現在、都庁内の各部署が扱うシステムは独立しており、組織間の円滑な情報共有ができていなかったり、事業者・事業所は法人代表者や住所情報の変更等の際、各所管部署にそれぞれ申請や届出をする必要があり、手間と時間の観点で事業者の負担が大きい状況があります。
この問題を解決するために、まず今期は(2024年度)福祉と保健医療の両局のデータを横断的に閲覧・共有できる情報連携基盤を構築し、さらに来期(2025年度)はワンストップ・ワンスオンリー実現のためデジタルサービス局が開発している事業者データベースとも連携をしながら、効率的なデータ連携の設計を行い、開発を行っていく予定です。今期取り組んだ情報連携基盤の構築により、職員が求める情報にすぐにアクセスすることができるようになりますし、副次的な効果として、福祉・保健医療の両局で高品質なデータを保有することができるので、今後、事業のデータ分析による有用な施策立案にも活用されることを期待しています。
この大規模なプロジェクトの中で、ICT職として果たす役割とはどのようなものですか?
中村:プロジェクト全体に責任を持ち、システム開発の進行管理や意思決定を担っています。プロジェクトには委託事業者やGovTech東京の技術者など、多くのステークホルダーが関わり、その規模は30〜40人以上。立場の異なる人たちと一つのゴールを目指す過程には、時に意見の調整や難しい局面を乗り越えなければならないこともあります。
例えば、作成する仕様書一つをとっても、その内容の解釈や対応範囲が受け手によって異なる場合があり、開発が進む中では新たな調整が避けられないこともあります。
それでも私は、より良いものを作りたい。東京都にはその思いを支え、ベストを尽くせる環境があります。この環境の中で、仲間たちと目線を合わせ、プロジェクトを前に進めていくことが、私の役割だと考えています。
「私もいつか先輩のように。」目指すべき背中がここにある
田添さんが担当されている、“ダッシュボードの提供業務”について、具体的に教えてください。
田添:ダッシュボードとは、データをグラフや図表で整理し、業務の状況や成果を一目で把握できるツールのことです。例えば、デジタルサービス局デジタル戦略部で公開しているのが「行政手続デジタル化ダッシュボード」です。

このダッシュボードでは、これまで紙や対面で行われていた行政手続がどの程度デジタル化されているか、その進捗状況をプロセスごとに確認できます。このようにデータを可視化することで現状や今後の課題等が発見できるのがダッシュボードの特徴であり、各局の施策立案や業務効率化のために利用されています。
私は、これらダッシュボードを作成する為の環境(ツール類等)の提供や、講習会の開催等による利活用の促進、問い合わせ対応等を担当しています。
ICT職としてやりがいを感じるのは、どのような時でしょうか?
田添:要望を的確に汲み取り、課題解決に貢献できた時にやりがいを感じます。ダッシュボードにデータを表示させるには、まず各局の担当者が持つデータを収集し、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)で整理・分析して、視覚的に分かりやすい形に整える必要があります。
そのため、技術的なサポートを担う私たちICT職と、データに詳しい各局担当者との連携は欠かせません。ICT職として、各局が「どのデータを」「何の目的で」「どのように見せたいか」を丁寧にヒアリングし、試行錯誤を重ねて提案する。そうしたプロセスを経て、ダッシュボードが期待通りに動いた瞬間は、大きな達成感があります。
他部署との連携に際して、難しさを感じることはありますか?
田添:各局が実現したいことを素早く理解し、解決の糸口を提案するのは決して簡単ではありません。それぞれが保有するデータは、専門的で複雑な内容や関連性を持つことが多く、一筋縄ではいかないと感じることもあります。
そんな時、いつも目標にしているのが、上司や先輩職員の背中です。周囲から信頼され、複雑な内容にも的確に対応する姿を見るたび、「私もいつかそうなりたい」と奮い立つような気持ちになります。
学びも趣味も、家族との時間も。自分らしく働ける職場環境

現在の職場の雰囲気や働き方について、教えてください。
中村:私も十分に大人ですが(笑)、大人な対応をしてくださる方が多いですね。みなさん優しくて落ち着いていらっしゃって、いつも安心して相談できます。声をかけると、手を止めて丁寧に対応してくださるので、「素敵だなぁ」としみじみ思います。
田添:私もそう感じます。入庁前は厳格な雰囲気を想像していましたが、実際には上司や先輩との距離が近く、「分からないことはいつでも聞いて」と声をかけてくれる風通しの良い環境です。また、細かな確認を取りたい時は対面で、急ぎでない場合はチャットツールを使うなど、状況に応じてコミュニケーション方法を選べます。こうした柔軟さも、働きやすさを感じる理由の一つだと感じています。
中村:選択肢があるのって、本当に嬉しいですよね。必要だと感じた人がその瞬間に使える制度がある。それってすごくありがたいことだと思います。
私は先日、家族のケアが必要な場面がありました。その時は、午前中に登庁して業務を進め、午後は病院の近くでリモートワーク。その後、時間休※を取って病院に向かうといった、柔軟な働き方ができました。今も引き続き、週に1〜2回のリモートワークを活用しています。働く場所や時間に幅を持たせられるのは、無理なく仕事を続けるための大きな支えになっています。
※東京都では、時間又は半日単位で年次有給休暇を取得できます。
ご自身の経験から、その柔軟さを実感されているんですね。研修やサポート体制はいかがでしょうか?
中村:新任研修や階層別研修に加えて、全職員を対象とした研修も充実しています。22項目のデジタルスキルに関する講座から、自分の興味に合ったものを選択できる仕組み。私はAIを活用したシステム開発の研修を受講しました。
AIによる開発は未経験だったので、通常のプロジェクトとの違いや留意すべきポイントを理解できたのがとても嬉しかったです。もともと新しいことに挑戦することが好きなので、最先端の技術を学べる環境は自分の価値観に合っていますし、新鮮な気持ちになります。
田添:AIを選択されたんですね。私はクラウドサービスに関する研修を選びました。私のこれまでの経験では、デバイス管理システムに少し触れる程度でしたが、研修では仮想環境をクラウド上で構築する方法など、実践的な内容を学習できました。普段の業務ではなかなか手が届かない分野に挑戦できるのは、この研修制度の大きな魅力だと感じています。
また、私が都庁へ入庁した理由の一つに「同じ場所で長く働き続けたい」という思いがあります。ITは進化のスピードが速い分野。だからこそ、新しい知識やスキルを吸収し続けられる環境があるのは、将来を見越した安心感に繋がっています。
デジタル技術を活用し、東京の未来を変える一翼を担う
これから挑戦したいプロジェクトや分野はありますか?

田添:クラウドインフラやネットワーク関連のプロジェクトに携わり、技術的な部分でしっかりと貢献できるポジションに挑戦したいと考えています。東京都の仕事は、関わる人が多く、その影響範囲は都民全体に広がります。だからこそ、一緒に仕事を進める方々の意図を的確に汲み取り、自分の提案やアイデアが効果的な解決策に繋がるよう、尽力したいと思っています。
中村:AIなどの最先端技術を活用して、都民にとってより良いサービスを提供するプロジェクトに挑戦したいと考えています。新しいものが好きなので、AIのような最先端の技術を取り入れたサービス構築は、胸が高鳴ります。
ただし、AIはあくまで手段であり、それをどう活かして価値を生み出すかが重要です。難しさはあると思いますが、それ以上に大きなやりがいを感じられる分野だと思います。
最後に、ICT職に興味を持っている方へメッセージをお願いします。

中村:ICT職は、都政とICTをつなぐ「橋渡し」としての役割があると表現されることがあります。確かにそれも一つの側面ですが、全てではありません。常に当事者意識を持って、都政や都民の暮らしが良くなる最適解を探す。それこそが、ICT職の本質だと感じています。
ただ、私も入庁前はICT職に対してハードルの高さを感じていました。それでも一歩を踏み出してみたら、想像以上に多くの可能性が広がっていたんです。ICT職に少しでも興味がある方は、ぜひ飛び込んでみてください。
田添:東京都には、特化した技術を持つ方も、未経験から挑戦する方も、それぞれが安心して活躍できる環境があります。今、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、研修やメンター制度など、充実したサポートが用意されているので、少しずつ前に進んでいけるはずです。また、採用試験についても、第1次試験は全国どこからでも受験日を選べる仕組み※が整備されるなど、挑戦しやすくなっています。
こうした柔軟な環境の中で、自分らしいライフ・ワーク・バランスを大切にしながら、都民の未来を一緒に考えてみませんか?共に働ける日を、楽しみにしています。
※令和7年度(春)東京都職員採用試験(I類B新方式)の詳細は、こちらからご確認ください。