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なぜSIerから都庁へ?キャリア活用採用選考で拓いた、新たな道とは
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専門的な知識・スキル・経験へのニーズが高い分野ごとに区分を設け、即戦力となる人材を採用する「キャリア活用採用選考」。東京都では、ICT分野においても民間経験を活かした人材の活躍が進んでいます。今回は、民間のSIerでキャリアを重ねた田口さんと林さんにインタビュー。転職のきっかけや入庁後の働き方、今後の展望について聞きました。(記事中の組織名称は配属当時のものです)
田口(東京都/ICT職)
デジタルサービス局DX協働事業部DX協働事業課(課務担当)、環境局総務部環境政策課(デジタルシフト推進担当)兼務
大手通信会社の子会社で約10年間、SIerとして業務システムの開発・運用・保守に従事。2024年に東京都庁へ入庁し、庁内のデジタルツール導入や職員支援、環境局でのDX推進、ICT相談対応、構造改革関連業務を担う。ICT職4期生。
林(東京都/ICT職)
デジタルサービス局DX協働事業部DX協働事業課(各局DX協働担当)
大手SIerで約20年間、アプリケーションエンジニアやプロジェクトマネジャーとして、システム開発・運用に携わる。2025年に東京都庁へ入庁。各局のDX推進に向けた伴走支援やプロジェクト監理を担う。ICT職5期生。
培った経験を、公共性の高いフィールドで試したい
まずは、これまでのご経歴と担当されてきた業務について教えてください。

田口:新卒で通信会社の子会社に入社し、お客様の業務システムの開発や運用、保守に携わりました。その後はお客様先のIT部門に常駐し、発注側としてシステム導入支援などを担当。SIerとして約10年、開発・発注それぞれの現場で経験を積んできました。
林:私はSIerにて約20年、多様な業界のシステム開発・運用に携わってきました。アプリケーションエンジニアとしては、要件定義から設計・開発・テストまでの一連の工程を経験。さらに、プロジェクトマネジャーとして進行管理やクライアントとの調整を担い、プロジェクト全体の推進を図ってきました。
民間でのご経験を経て転職を検討し始めた背景と、東京都を選んだ決め手を教えてください。
田口:転職を検討し始めたのは、世の中で「売り手市場」が広がりつつあった頃です。広告やSNSでも、転職やキャリアチェンジに関する情報を目にする機会が増え、「自分の知識やスキルをより広い領域で活かすことができるかもしれない」と考えるようになりました。
そうした中で、偶然目にしたのが、ICT職のキャリア採用の広告です。募集要項を読んでみると、業務内容や求められるスキルが自分に合っていると感じ、「ここなら自分の力を活かして社会に貢献できそうだ」と思いました。また、情報処理安全確保支援士※の資格を保有していたため、試験の一部が免除される点も魅力的でした。
最終的に入庁を決めたのは、多様な行政分野に関わるチャンスがあり、より広い視点で社会に貢献できる環境だと感じたからです。転勤の可能性が低いことも大きかったですね。

林:私は、30代後半ごろから「将来的にはシステムの企画や発注者側の立場でシステム開発に深く関わりたい」と思っていました。その中で、45歳までには今後のキャリアについて決断したいと考え、転職を視野に入れるようになりましたね。
キャリアチェンジにあたって行政を選んだのは、自分が手がけたシステムが、より多くの人々の暮らしを支えるような環境に身を置きたいと考えたからです。
中でも東京都は、人口や事業規模の大きさに加え、ここで生まれた仕組みが全国に波及する影響力があると考えたからです。当時、他自治体の選択肢もありましたが、最終的には東京都の持つスケール感と可能性に魅力を感じて入庁を決めました。
※選考区分「ICT」においては、専門試験が免除される資格があります。対象となる資格の一覧は、こちらをご確認ください。
徹底的なコンプライアンス意識とDXに対する感度の高さ
これまでの民間でのキャリアと比べて、都庁のカルチャーや業務の進め方にはどのような違いを感じましたか?
田口:入庁してまず感じたのは、コンプライアンスへの意識の高さです。情報の取扱いや業務の進め方について、細かな部分まで徹底されており、「ここまできっちりしているのか」と驚いた場面もありました。こうした運用が信頼性の高い行政運営を支えているのだと実感します。
また、給与の原資が税金であるという意識も、日々の行動に影響を与えています。私はもともと「無理・無駄・ムラ」のない働き方を大切にしてきましたが、今はより一層、時間の使い方や仕事の進め方に向き合うようになりました。
林:まだ入庁して日が浅いのですが、働き始めて感じたのは、想像していた以上に柔軟な雰囲気があるということです。特に、私の周囲には民間企業出身の職員やGovTech東京のメンバーも多く、ITやDXに対する感度が高いと感じています。私と同じようにキャリア活用採用で入庁した方も多く、働き方や考え方におけるギャップは少ないかもしれません。
一方で、意思決定のスピードには違いを感じます。行政は年度ごとに予算が組まれ、それに基づいて事業が進められるため、前年度に計上していなかった内容については、柔軟に変更することが難しい場面があって……。そうした制度的な枠組みの中で、どのように工夫して対応するか調整力が求められると感じています。
働き方が変わったことで、ライフ・ワーク・バランスはどのように変化しましたか?

田口:子どもがちょうど小学校に入学したタイミングでの転職だったため、学童への送り迎えを考慮して、勤務時間を早めの時間帯にシフトしています。都庁には複数の勤務パターン※が用意されており、自分のライフスタイルや仕事の状況に合わせて選べるのがありがたいですね。
また、業務の状況を見ながら、週に2回ほどリモートワークも活用しています。基本的には定時で退庁することを意識しつつ、必要に応じて柔軟な働き方を選択できています。
林:前職では忙しさに追われる毎日だったので、入庁後は生活リズムがぐっと整いました。家族と過ごすゆとりも生まれ、子どもが起きている時間に帰宅できるようになったのは、大きな変化ですね。
リモートワークについては、職場内でも自然に浸透している印象があります。私はまだ利用頻度は少ないのですが、仕事の進め方に慣れてきたら、積極的に活用していきたいと思っています。
※職員の勤務時間は、9つのパターンで設定されています。詳しくはこちらをご確認ください。
SIerでの知見を活かし、都庁のDXを加速させる

現在、ICT職としてどのような業務を担当されていますか?
田口:所属はデジタルサービス局ですが、環境局に常駐し、事業のDX推進役として業務に取組んでいます。環境局では、複数の施策を支えるシステムが運用されています。それぞれの背景や役割を把握した上で、現場が円滑に活用できるよう、継続的な支援が必要です。各システムの担当者となる方はICTに詳しい方ばかりではないため、各局兼務のICT職員として技術的なサポートやプロジェクト推進の支援を行っています。
また、業務システムの導入・運用支援だけではなく、庁内のデジタルツール活用支援も大きな役割の一つとなっています。例えば、マイクロソフトのクラウドツールに関する講習会の実施や、デジタルサービス局から展開された通知を局内向けにわかりやすく共有するといった業務です。「社内SE」のような働き方をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
林:私は、都庁内の各局で進められているデジタルサービス開発に、技術支援の立場から関わっています。DX協働事業課には「各局DX協働担当」という役割があり、現在は4つほどのチームに分かれて、それぞれが担当する局を支援しています。
私の役割は、GovTech東京の方々と連携しながら、各局のデジタル施策に対する技術的な観点からのアドバイスや、プロジェクトに伴走しながらプロジェクト監理を行うポジションです。
日々の業務の中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
田口:担当者の方から「相談してよかった」「本当に助かりました」と声をかけていただけると、うれしくなりますね。環境局のシステムは、私にとって初めて扱う領域も多く、日々新しい視点や知識を得られることも、やりがいのひとつです。
また、都庁のシステムは、基本的に都の政策を実現するために設計されています。政策には都民の声や社会のニーズが反映されているため、その基盤づくりに関わること自体が、社会貢献に直結していると感じます。
林:私が担当するプロジェクトは、都庁総合ホームページ関連や、子供・子育て分野のオンラインサービスから災害対策関連のシステム案件など、多岐にわたります。こうした都民の生活に直結するシステムを支える立場であることに責任とやりがいを感じています。
これまでのご経験は、現在の業務にどのように役立っていると感じますか?
田口:SIer時代に培ったシステム開発の知見は、ベンダーとのやり取りの際にとても役立っています。これまでの現場感覚があるからこそ、提案内容の妥当性や、進行上のリスクなどを適切に見極められますし、相手とも対等な立場で意見を交わすことができます。

林:私も同感です。前職でシステム開発やプロジェクト推進に携わった経験があるからこそ、業務全体の流れや必要な対応がイメージでき、スムーズに進められています。
また、以前は受注側でお客様のシステム開発を支援する役回りでしたが、今は同じ組織の一員として、共通の目標に向けて並走する関係です。発注側・受注側の双方の立場を理解しているからこそ、プロジェクトに係る各局担当と事業者の相互理解を促しながら円滑な連携を図れると感じます。
ICT職が目指す、よりスマートな行政の姿
都庁全体でDXが進む中で、現場で感じている課題やご自身が今後挑戦してみたい分野を教えてください。
田口:現在は、局によってシステムや業務の進め方が異なります。少し大げさな言い方かもしれませんが、別の会社のように感じる場面もあって……。各局で個別に最適化が進んだ一方で、他局の取組が把握しづらくなり、結果として全体像が見えにくくなっているのでは、と感じています。
業務を広い視野で見た時、局を越えて共通化できる部分や、効率化の余地があると感じているので、少しずつでも局同士がよりスムーズに連携できる環境づくりに貢献したいと考えています。
実現に向けて、特定の技術にとどまらず、幅広い知識と経験を活かせるジェネラリストとして、新たな技術の導入やプロジェクト運営にも注力できたらうれしいです。
林:田口さんのお話にもありましたが、都庁内には、まだ共通化・標準化が十分に進んでいない業務やシステムが多く残っていると感じます。例えば申請業務では、基本的な流れが同じであっても、局ごとに異なるシステムを使っているケースがあり、改善の余地は大きいでしょう。
ですので、まずはこれまで前提とされていた業務の進め方や仕組みに目を向けることが大切だと考えています。Govtech東京が開発して庁内に提供を進めているAI共通基盤である「生成AIプラットフォーム」のような仕組みの共通化を進めて、将来的に都外の自治体にも展開していければ、日本全体の行政サービスの向上につながるはずです。
私もこれまでの開発側での経験を活かし、広く社会にインパクトを与える仕組みづくりに積極的に関わりたいと思います。
最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
田口:キャリア活用採用という名の通り、これまで培ってきた専門的なスキルや経験を活かしたい方にとって、都庁は多くの可能性がある職場です。
都民の生活や社会全体に影響を与える公共性の高い分野に関われる点も、魅力のひとつ。社会に役立つフィールドで力を発揮したいと思ったら、都庁での仕事も選択肢に入れてみてください。
林:これまで民間で培ってきた専門性やプロジェクトマネジメントの経験は、都庁のICT職においても大きな強みになります。実際、私たちの現場でも、そうした知識やスキルを持つ方は多方面で活躍しています。
もちろん、待遇面など、ご自身が重視する条件もあるかと思いますが、「社会に貢献したい」「より大きなスケールで仕事に挑戦したい」という志をお持ちの方にとって、都庁はやりがいのある環境です。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。
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