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公開日:
2026/02/02
最新更新日:
2026/02/02

ICT職×事務職で推進する、3万件超の行政手続デジタル化

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東京都では、全庁を挙げて「行政手続のデジタル化」に積極的に取り組んでいます。対象となる手続は、全庁で約3万件。そのうち91%(令和7年12月末現在)のデジタル化が完了し、都民の多様な生活スタイルに寄り添った行政サービスへと変貌を遂げつつあります。

この大規模なプロジェクトを推進するのは、制度や業務フローを整える「事務職」と、技術的解決策を実装する「ICT職」の協働チームです。

なぜ、これほどの成果を上げることができたのか。そして、残された課題にどう取り組んでいくのか。
今回は、デジタル手続推進課の塩田さん(ICT職)と鈴木さん(事務職)にインタビュー。1,400万人の生活を支えるインフラをより良くしていく、その仕事の裏側にある工夫や面白さについて聞きました。(記事中の組織名称、役職は取材当時のものです)

塩田(東京都 / ICT職)

デジタルサービス局 DX協働事業部 デジタル手続推進課 デジタル手続推進担当 課長代理
2018年入庁。前職は民間企業のSIerにてSEとして従事。現在はICT職として、行政手続のデジタル化におけるシステム基盤やツールの整備、技術的な側面からの課題解決を主導している。

鈴木(東京都 / 事務職)

デジタルサービス局 DX協働事業部 デジタル手続推進課 デジタル手続推進担当
2020年入庁。主税局での税務事務(滞納整理等)を経て、2024年より現職。現在は事務職として、デジタル化した手続の品質向上やBPR(業務改革)、各所管部署との調整・普及啓発を担当している。

目次

  • スタートは「3万件の棚卸し」から。コロナ禍で加速した都庁DXの現在地
  • 事務職が「旗」を振り、ICT職が「基盤」を整える
  • デジタル前提で業務を見直す「BPR」を徹底。定着の鍵はユーザー視点
  • 決められたルールに従うのではなく、ルールそのものを変えていく

スタートは「3万件の棚卸し」から。コロナ禍で加速した都庁DXの現在地

――まず、お二人が取り組んでいる「行政手続のデジタル化」プロジェクトについて教えてください。

塩田:東京都には、許認可申請や補助金の交付、施設の利用申し込みなど、あらゆる種類の行政手続が存在します。私たちは、これらをオンラインで完結できるようにし、都民の利便性を向上させることをミッションとしています。

プロジェクトが本格始動したのは2021年頃です。まず直面したのは、「そもそも都庁全体でいくつの手続があるのか、正確な全容がわからない」という課題でした。そこで、全庁約400〜500の部署を対象に保有している手続をすべてエクセルファイルにリストアップしてもらい、徹底的な棚卸し調査を行いました。

鈴木:私は当時この部署にはいませんでしたが、現場からは「こんなに膨大なエクセルファイルを埋めるのか」と驚きの声が上がったと聞いています(笑)。しかし、この調査によって、都庁には約3万件もの手続があることが可視化されました。

外部リンク
行政手続デジタル化ダッシュボード

塩田:以前は「行政手続をすべてデジタル化するのは難しい」という声もありました。しかし、コロナ禍によって対面での手続が困難になり、「デジタル化は必須である」という認識が一気に広がりました。そこから、「東京都デジタルファースト推進計画」などを通じて推進し、現在では全体の91%にまでデジタル化が進んでいます。

事務職が「旗」を振り、ICT職が「基盤」を整える

――3万件もの手続をデジタル化するために、ICT職と事務職はどのように連携しているのでしょうか。

塩田:役割分担を一言で言えば、事務職がプロジェクトを推進する「ハンドル」を握り、ICT職がそれを動かすための「エンジン」や「仕組み」を提供する関係です。

鈴木:事務職である私は、各局の担当部署に対して「この手続をデジタル化しましょう」「業務フローをこう見直しましょう」と働きかけ、調整を行う役割です。しかし、現場から「具体的にどうやればいいの?」と聞かれたとき、技術的な裏付けがないと話が進みません。そこでICT職である塩田さんに相談し、技術的な解決策を提示してもらいます。

塩田:3万件もの手続に対し、一つひとつ個別にシステムを開発していたら、いくら時間と予算があっても足りません。そこで私たちは、プログラミングの専門知識がない職員でも申請フォームを作成できる「LoGoフォーム」や、国が提供する補助金申請システム「Jグランツ」といった共通基盤を導入しました。

私の役割は、これらのツールを整備し、現場が迷わず導入・活用できるための技術的なサポートを提供することです。いわば、全庁の職員が自走できるための土台を作るようなイメージですね。

――技術的な専門性が特に発揮されたエピソードはありますか?

鈴木:最近では「公示送達」のデジタル化での連携が印象的でした。公示送達とは、書類が宛先不明で戻ってきた際などに、役所の掲示板に一定期間掲示することで法的に相手に到達したとみなす手続です。これをインターネット上で行う場合には、個人情報を含むため、プライバシーへの配慮を適切に行う必要があります。

事務職だけでは「どこまで公開していいのか、技術的にどう制限をかけるべきか」の判断が難しい。そこで塩田さんに相談し、サイトの裏側の構成やセキュリティ対策について具体的なアドバイスをもらうことで、検討をスムーズに進められています。

デジタル前提で業務を見直す「BPR」を徹底。定着の鍵はユーザー視点

――単に紙をデジタルに置き換えるだけでなく、業務そのものを変える「BPR(Business Process Re-engineering)」にも取り組まれているそうですね。

鈴木:はい。BPRとは、添付書類の廃止や申請項目の削減など、「業務プロセスそのもの」を見直す取り組みです。

塩田:その一例として、手数料のキャッシュレス納付があります。これまで手数料の支払いは「窓口での現金払い」が主流で、来庁できない方は「郵便局で定額小為替を買って同封する」という方法をとっていたのですが、クレジットカードやQRコード決済などのキャッシュレス対応に切り替えました。

これにより、都民の方は「わざわざ窓口や郵便局に行く時間」や「小為替の手数料」が浮きます。一方、職員側も「窓口での現金の授受」や「送られてきた小為替を数え、管理する」という事務負担から解放されました。デジタル化は、都民の時間を生み出すだけでなく、職員を単純作業から解放し、より付加価値の高い業務に集中させる効果もあります。

鈴木:現在は、デジタル化した手続の「質」を上げるフェーズに入っています。その一環として、全手続に「ユーザーレビュー機能」を実装し、利用者からリアルタイムでフィードバックをもらう取り組みを進めています。

塩田:ここでもICT職としての工夫が必要でした。たとえば、対象の行政手続が10個程度であれば、私たちが個別に作り方を教えたり、代わりに設定したりすることもできます。しかし、実際の対象は3万件にのぼります。

単に「機能をつけてください」とお願いするだけでは、現場の職員は戸惑ってしまいますし、私たちもすべてをサポートしきれません。結果として、多くの手続が「やり方がわからない」と止まってしまう懸念がありました。

だからこそ、現場の職員が自分たちで無理なく実装できる仕組みが必要でした。そこで、どんなフォームにも簡単に組み込める共通テンプレートや、集計を自動化するツールを私たちが開発して配布し、導入のハードルを極限まで下げることに注力したのです。

その結果、多くの手続でレビュー機能が導入されました。今では、「日曜日の夜に家から申請できて助かった」「とても簡単だった」といった声が実際に届くようになり、それが各部署の職員のモチベーションにもつながっています。

決められたルールに従うのではなく、ルールそのものを変えていく

――民間企業から転職された塩田さんにとって、都庁での仕事の面白さはどこにありますか?

塩田:前職のSIer時代は、年次が上がるにつれて売上や利益を追うことが求められ、純粋に「良いシステムを作りたい」という思いとの葛藤がありました。しかし都庁は行政機関ですから、利益や売上に左右されることなく「本当に都民のためになるか」という一点に向き合えます。そこが最大の魅力ですね。

また、入庁当初は紙文化をはじめとした民間企業との慣習の違いに驚きました。でも、それは裏を返せば「変えていける余地が大きい」ということです。

「都庁の当たり前」は「世の中の当たり前」ではありません。変えた方が良いと思うルールがあれば、制度そのものに働きかけていくことができる。このスケール感が、都庁のICT職ならではの面白さだと思います。

――最後に、これからどんな方と一緒に働きたいか、メッセージをお願いします。

鈴木:事務職は数年ごとに全く異なる部署へ異動しますが、ICT職の方は専門性を軸にキャリアを積んでいかれます。今のプロジェクトも、技術的な知見を持つICT職の方がいなければ、私たち事務職だけでは決して進めることができません。

私自身、かつて一都民として「不便だな」と感じていたことが、今の仕事の原動力になっています。そうした不便さを解消し、より良いサービスを届けるためには、専門的なスキルを持った方の力が不可欠です。ぜひその知見を活かして、私たちと一緒にプロジェクトを推進していただければ嬉しいです。

塩田:3万件の手続のデジタル化は、まだ道半ばです。ここから先は、より複雑な課題に取り組むことになります。しかし、私たちが作った仕組みは、他の自治体のロールモデルになり得るポテンシャルを秘めています。

既存のルールに縛られず、技術を使って「新しい行政のスタンダード」を一緒に作っていける方をお待ちしています。

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