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公開日:
2024/12/24
最新更新日:
2025/06/16

都民の暮らしはどう変わる?「デジタルツイン実現プロジェクト」がもたらす未来とは

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デジタルツインとは、現実世界を仮想空間に再現することで、高度な分析やシミュレーションを可能にする技術です。防災、まちづくり、モビリティ、環境、産業(観光など)といった多岐にわたる分野での活用が期待されています。

本記事では、ICT職としてプロジェクトをけん引する木川さんにインタビュー。プロジェクトの進捗や今後の展望、さらにICT職が担う「デジタル技術と人をつなぐ懸け橋」としての役割について詳しく聞きました。

木川(東京都/ICT職)

デジタルサービス局デジタルサービス推進課データ利活用担当。民間のシステム会社で17年間、システム開発や運用業務を経験。その後、2015年にキャリア活用採用選考を経て東京都庁に事務職として入庁。2021年よりICT職へ職種を変更し、デジタル化推進の一翼を担う。

目次

  • デジタルツイン実現プロジェクトとは?
  • デジタルツイン×ICT職
  • デジタルツインで変わる、東京の未来

デジタルツイン実現プロジェクトとは?

デジタルツイン実現プロジェクトの概要を教えてください。

デジタルツイン実現プロジェクトは、デジタルツイン技術を活用し、東京都が直面する社会課題の解決と都民の生活の質(QOL)向上を目指す取組です。

東京都は2020年にデジタルツイン実現プロジェクトを始動。「Society5.0※」の未来社会を目指し、2030年までにデジタルツインの実現に向けて対応を進めています。

そもそもデジタルツインとは、センサーなどから取得したデータをもとに、現実世界(フィジカル空間)を仮想空間(サイバー空間)上に再現する技術のこと。建物や道路といったインフラ、人の流れ、経済活動など、様々なデータをリアルタイムで収集し、フィジカル空間の「双子」をサイバー空間に構築します。

これにより、3次元空間を活かした高度な分析やシミュレーションが可能となり、得られた結果を現実世界へフィードバックすることで、防災、まちづくり、モビリティ、環境、産業など、幅広い分野における意思決定やシステム制御に役立てられます。

※Society5.0とは:
狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く「第5の社会」。サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムを活用し、経済発展と社会課題の解決を両立させた、日本が目指すべき未来社会の姿。

Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府 外部リンク

デジタルツイン実現プロジェクトによって、東京都や都民の暮らしはどう変わるのでしょうか?

デジタルツイン実現プロジェクトは、都民の暮らしをより安全で快適にするための試みです。特定のエリアや産業に限定せず、東京都全域を俯瞰的に捉えることで、これまでは全体像を把握しにくかった都市の課題がより明確になり、現実に即した解決策を導き出せるようになります。

例えば、東京都内を流れる河川の多くは複数の区や市を経由するため、大雨による河川の堤防決壊が生じた場合、局所的に対策を講じるだけでは十分な対応が難しい場合があります。デジタルツインを活用し、特定エリアに限定せずに仮想空間で浸水域や影響範囲を再現することで、事前に災害対策を強化し、被害の最小化につなげることが可能です。

デジタルツイン技術は、活用されて初めてその価値を発揮する「ツール」です。この技術を支えるプラットフォームやインフラを整備して、都職員だけでなく多くの都民、事業者の皆さまに使用していただくことで、都民のQOL向上を実現したいと考えています。

デジタルツイン実現プロジェクトのこれまでの成果と、今後の展望を教えてください。

デジタルツイン実現プロジェクトは、2030年の実現を目指して3つのフェーズに分けて進行しています。

フェーズ1では、デジタルツイン基盤の構築を目指し、情報の整備や外部有識者を招いた検討会の開催、ユースケースの創出などを実施しました。2021年には、東京都デジタルツイン3Dビューア (β版) 外部リンクや情報発信サイト 外部リンクを公開。都市部の人の動きと混み具合を可視化して、混雑を避けた経路情報を提供するなど、実用的な検証と基盤の整備を進めています。

2023年から進行中のフェーズ2は、デジタルツインを運用する中で見つかった改良点をシステムに反映し、分析やシミュレーション機能のさらなる強化を図る期間です。利用者ニーズに合うユースケースを検討し、順次実装を進めています。

また、リアルタイムデータの拡充にも積極的に取り組んでいます。リアルタイムデータとは、現時点の状況を即座に反映する情報のことで、既に都バスや都営地下鉄の位置情報を活用しています。例えば、3Dビューア上の緑色のボックスはバスの動きを示しており、20秒ごとに更新されるため、現在の走行位置を直感的に確認することが可能です。

出典:東京都デジタルツイン3Dビューア(β版) 外部リンク

▸都バスの運用状況をリアルタイムデータでみる 外部リンク

2030年から始まるフェーズ3では、デジタルツインのさらなる高度化と実用性の向上を目指しており、現在取り組んでいるフェーズ2はその前提となるため、極めて重要な期間です。3Dビューアの使いやすさを向上させる取組に加え、庁内外での認知拡大に向けた活動も進めていきます。

デジタルツイン実現プロジェクトの本格運用に向けて、課題はありますか?

東京都のような広域を対象としたデジタルツインの構築は、国内で初めての試みであり、非常にチャレンジングです。そのため、多くの課題を解決しながら前進する必要があります。

課題の一つとして挙げられるのが、有用なデータの不足です。センサーやAIカメラの活用、さらに都職員による現地での点群データ取得などの取組が進められていますが、現状ではまだ十分とはいえません。今後は、生活文化スポーツ局や産業労働局など、東京都各局が保有する有効な地理情報やインフラ関連データの活用に加え、産学官でのデータ連携を強化し、効率的かつ計画的なデータ収集が求められます。

また、デジタルツインはその活用を庁内に留めず、多くの方にお役立ていただきたいと考えています。そのため、現在公開している3Dビューアの操作性向上は、重要な課題です。デジタルツールの操作に慣れていない方から事業者まで、誰でも直感的に操作できる設計を目指し、機能改善や新機能の追加を図ります。さらに、SNSを活用した情報発信やイベントの開催などを通じて、デジタルツインの価値を広く伝えるための広報活動にも力を注いでまいります。

デジタルツイン×ICT職

デジタルツイン実現プロジェクトにおけるICT職の役割を教えてください。また、どのようなスキルが求められますか?

宮坂副知事のメッセージ 外部リンクにもあるように、ICT職には、東京都が目指す「スマート東京」の実現に向けてデジタル戦略を担い、DX推進を加速させるという役割が期待されています。

デジタルツイン実現プロジェクトにおいても、その基本的な使命は変わりません。その上でICT職は、デジタルツインを構築する事業者やシステムエンジニアと、ユーザーをつなぐ「懸け橋」としての役割が求められています。

ICT職の仕事には、専門的な行政用語をかみ砕いて事業者に伝え、仕様書や要望書にまとめる場面や、システム用語に不慣れな庁内外のユーザーの方に操作方法を分かりやすく説明する機会が多くあります。関係者間のスムーズな連携を実現するためには、コミュニケーション力や調整力、さらにそれぞれの提案や状況を正確に理解し、的確な決定を下す判断力が重要です。

さらに、デジタルツイン3Dビューアはクラウド環境で提供されるため、ネットワークやセキュリティ、クラウド、Webに関する知識が欠かせません。現在、システム運用と機能改善が並行して進められており、プロジェクト全体を管理するためのプロジェクトマネジメントスキルや進捗管理能力が求められます。

ICT職はこうした多岐にわたるスキルをバランスよく発揮しながら、専門性を活かしてプロジェクトを幅広く、そして継続的に支えています。

デジタルツイン実現プロジェクトに携わる中で感じる、やりがいを教えてください。

都市のデジタルツインが構築されれば、1,400万人以上の都民の生活が、より便利で快適になることが期待されます。
これほど広範囲なデジタルツインに携われる経験は非常に貴重であり、大きな挑戦とやりがいを強く感じられるプロジェクトです。2030年までの実現に向けて、大規模で有用なデータを反映させた際には達成感を覚え、その積み重ねがさらなるモチベーションとなっています。

また、プロジェクトの一環で海外の都市と意見交換を行い、先進的な対応を知る機会がありました。こうした事例に触れることで、新たな視点が広がり、国際的な視野が養われます。世界中から関心が寄せられる技術に携わりながら、東京都の未来を描くICT職の仕事には、ダイナミックな魅力があると感じています。

東京都として、このような先進的なプロジェクトに取り組む意義をお聞かせください。

地震や水害といった自然災害は、いつ発生するかわかりません。それに加え、少子高齢化や人口減少、人流や物流の変化など、東京都が直面する課題は多岐にわたります。これらの課題に対応するためには、デジタルツインを誰もが使えるツールとして確立することが不可欠です。

例えば、災害時に都民自らが安全な避難場所やその周辺施設の情報を簡単に確認できる仕組みが整えば、より早く適切な行動が取れるようになるかもしれません。まずは防災を起点に、さらにまちづくりやモビリティなど、様々な分野でデジタルツイン技術を活用し、課題解決の基盤を整備していきたいです。

また、このプロジェクトは都市部だけでなく、多摩や島しょ地域を含む都内全域を対象としています。こうした広域にわたるデジタルツインの構築は、人的資源やコストの課題から、特定の事業者だけでは取り組むのが難しい分野でもあります。そのため、東京都が中心となり、多くの関係者と連携しながら進めることで、このプロジェクトの意義がさらに深まると考えています。

デジタルツインで変わる、東京の未来

デジタルツイン実現プロジェクトは、都民の暮らしの質(QOL)向上に大きく貢献する取組です。その中で、ICT職はデジタル技術と人をつなぎ、社会課題を解決へと導く役割を担っています。

「デジタル技術を通じて東京の未来を創りたい」「都民の暮らしをもっと良くしたい」という志を持つ方にとって、このプロジェクトは大きなやりがいを感じられる舞台です。

災害時の迅速な対応、都市計画の最適化、交通渋滞の解消など、デジタルツインが実現する東京は、より安心で効率的な街へと変わっていくはずです。

東京都のICT職として働くことをお考えの皆さん、この未来を一緒に切り拓く仲間として、挑戦してみませんか?

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